今月(2014/3月)はレヴィナス関連の必読書が相次いで刊行されます。
レヴィナス研究の最前線をまとめたものから、博士論文をもとにした重厚な研究書、そして近年刊行されたばかりの『著作集』の邦訳などバリエーションに富んだラインナップとなっております。
この機会にみなさまぜひご一読ください。
◯合田正人(編)
『顔とその彼方 レヴィナス『全体性と無限』のプリズム 』〈明治大学人文科学研究所叢書〉(知泉書館)
■目次
まえがき――見知らぬ読者へ(合田正人)
・ジャン=ミシェル・サランスキ「『全体性と無限』の諸地平」(合田正人・渡名喜庸哲訳)
・トマス・ヴィーマー「複数の序文 言語の意味性について――『全体性と無限』から出発して――」(藤岡俊博訳)
・シルヴィ・クルティーヌ=ドゥナミ「汝像を作るなかれ――見えないものを聞くレヴィナス――」(渡名喜庸哲訳)
・アンナ・ヤンポルスカヤ「レヴィナスとコイレにおける無限の観念」(柿並良佑訳)
・合田正人「「スピノザ主義の対極にて」?」
・小手川正二郎「存在と真理――存在だけしないことがなぜ「悪い」のか――」
・渡名喜庸哲「『全体性と無限』におけるビオス――クルト・シリングの注から出発して――」
・藤岡俊博「彷徨と居住――ハイデガー『真理の本質について』の読者レヴィナス――」
・村上靖彦「重力と水――レヴィナスのエロスと体が動かない人の介護――」
・ジェラール・ベンスーサン「両義性と二元性――レヴィナスにおけるエロス的なものについて――」(平石晃樹訳)
後記(合田正人)
人名索引
執筆者紹介
…2011年に明治大学で開催された、
エマニュエル・レヴィナス「全体性と無限」刊行50周年記念国際シンポジウムの記録。独自の視点から『全体性と無限』を中心とした著作群に光を当てた、意欲的な論文10編を収録する。
→なおシンポジウムの映像を
こちらあるいは
明治大学・大学院「iTunes U」(vol.1-1~15, vol. 2-1~15)で観ることができます。
◯藤岡俊博
『レヴィナスと「場所」の倫理』(東京大学出版会)
■目次
序 レヴィナスの「場所」へ
第Ⅰ部 具体性の諸相
第1章 現象学による具体的空間の復権
第2章 存在への繋縛と存在からの逃走
第3章 異教とユダヤ教
第Ⅱ部 環境世界と根源的場所
第1章 『実存から実存者へ』の「世界」概念
第2章 〈ある〉と融即
第3章 〈ある〉からの脱出――「場所」の所有
第Ⅲ部 居住と彷徨
第1章 存在論批判へ――五〇年代の展開
第2章 居住の倫理――『全体性と無限』
第3章 他性の在り処――《同》から《他》へ
第Ⅳ部 非場所の倫理
第1章 場所論的転回――「場所」から「非場所」へ
第2章 『存在するとは別の仕方で』の場所論的読解
第3章 「非場所」のさまざまな相貌
第V部 レヴィナスとイスラエル
第1章 離散とイスラエルのはざまで
第2章 困難なシオニズム――六日戦争とそれ以後
結び 「場所」をこえて
…レヴィナスの思想を「場所」という概念を軸に時代に沿って分析し、その倫理が組み立てられる展開を描き出す。哲学・倫理的著作とユダヤ教関連の著作の本質的な連関に着目し、イスラエル国家の問題にまで迫る。これまでにない包括的なレヴィナス像を提示する力作。
【第3回東京大学南原繁記念出版賞受賞作】
→受賞時の講評全文と受賞のことばを
こちらからご覧になれます。
→なお版元である
東京大学出版会のページにて「序 レヴィナスの「場所」へ」を無料で読むことができます。
◯エマニュエル・レヴィナス
『レヴィナス著作集 1 捕囚手帳ほか未刊著作』(ロドルフ・カラン, カトリーヌ・シャリエ監修、三浦直希, 渡名喜庸哲, 藤岡俊博訳、法政大学出版局)
※(追記)
版元のページでは3月刊行とありますが、4月にずれ込みそうです。
■目次
全体への序
はしがき
序
編集に関する注記
謝辞
I 捕囚手帳(一九四〇─ 一九四五年)
『捕囚手帳』への注記
[手帳1]
[手帳2]
[手帳3]
[手帳4]
[手帳5]
[手帳6]
[手帳7]
II 捕囚をめぐるテクストとベルクソン讃
捕 囚
イスラエルびとの捕虜における精神性
ユダヤ的捕虜体験
[ベルクソン讃]
III 哲学雑記
『哲学雑記』への注記
束A
束B
束C
束D
手帳A
手帳B
訳者あとがき(三浦直希)
編 注
人名索引
…戦争の惨禍を生き延び、全体性の暴力に抗して〈他者〉の倫理学を創出したユダヤ人哲学者エマニュエル・レヴィナス。その思想の生成と展開を示す、戦前から戦後期に書かれた哲学的な覚え書きや小説作品、講演原稿などの未刊テクスト群を集成する著作集、待望の邦訳刊行! 初巻には、捕虜収容所時代の手帳や論考をはじめ、『全体性と無限』準備期の哲学雑記を収録(全3巻予定)。
→原著は、Emmanuel Levinas,
Œuvres 1: Carnets de captivité suivi de Écrits sur la captivité et Notes philosophiques diverses, volume publié sous la responsabilité de Rodolphe Calin et Catherine Chalier, Paris, Grasset-IMEC, 2009.
◯ポール・リクール
『別様に―エマニュエル・レヴィナスの『存在するとは別様に、または存在の彼方へ』を読む』(関根小織訳、現代思潮新社)
■目次
第一章 ~とは別様に
――〈語ることDire〉と〈語られたことDit〉
第二章 別様に語られると
――第三者と正義
1 近さ・応答責任・身代り
2 第三者と正義
3 存在論の反復?
…本書に息づいているのは、願わくはレヴィナスをいちばん難しいところから理解したいという強い思いである。この思いが、『存在するとは別様に、または存在の彼方へ』の読解をその手引きにするというやや偏った選択の理由となっている。(本書より)
全体を貫くのものは、デリダが指摘してきた「レヴィナス思想のアキレス腱」ともいうべき言語の問題――レヴィナスが主張する「言語というものについて」およびレヴィナスが実行している「言語技法について」という二側面をもった意味での言語の問題である。 題名が『別様に』とあるのは、レヴィナス著『存在するとは別様に、または存在の彼方へ』(邦題『存在の彼方へ』)を読解する自由と解釈の可能性を示唆する言葉である。
→原著は、Paul Ricoeur,
AUTREMENT. Lecture d'Autrement qu'être ou au-delà de l'essence d'Emmanuel Levinas, PUF, 1997.